悪天候の増加にも拘わらず、不動産所有者はあえて災害保険を減額(2025年5-6月号)
ヒラリー・タトル(訳:鈴木英夫)[*]
2025年は既に記録的な自然災害に見舞われているが、ネーションワイド社が最近実施した商用不動産関係者への調査によれば、リスク認識と行動のギャップが拡大していることが明らかになった。不動産所有者、建設業者、事業主の3分の2以上(67%)が自然災害による損害を「非常に懸念」しており、これは2023年から5ポイント増加である。特に、山火事が発生しやすい州では93%(28ポイント増)、ハリケーンが発生しやすい地域では86%(16ポイント増)にまで増加している。
リスク自体とそれに対する懸念の両方が増加しているにもかかわらず、商用不動産関係者の26%が、自然災害に対する保険の補償が不十分であることを認めており、これは8ポイントの増加である。この危惧すべき傾向は、保険代理店の調査結果からも裏付けられている。彼らは、担当する法人顧客の少なくとも10人中4人が保険不足であると推定している。不動産所有者の4分の3は保険料の削減に取り組んでおり、42%はそのために補償範囲を縮小する意向を示しているのだ。
さらに、利害関係者は経済の不確実性と建設コストの上昇を主な障壁として挙げ、リスク軽減に向けた積極的な取り組みをむしろ縮小している。レジリエンス対策への投資意欲はわずか31%で、2023年から22ポイント低下した。また、支払う意思のある保険料の上限は1万ドルで、50%低下した。不動産利害関係者の95%が災害対応計画を策定していると回答した一方で、代理店の5人に1人は、顧客の半数未満しか天候による混乱を防ぐためのリスク管理計画を策定していないと見ている。
トピック
災害対策、保険、自然災害、リスク管理
注意事項:この記事は、“As Severe Weather Rises, Property Owners Are Knowingly Under-Protecting Against Risks,” Hilary Tuttle | June 17, 2025, Risk Management Site,(https://www.rmmagazine.com/articles/article/2025/06/17/as-severe-weather-rises-property-owners-are-knowingly-under-protecting-against-risks)をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
ヒラリー・タトルはリスクマネジメント誌の編集長。
鈴木英夫は、RIMS日本支部の主席研究員。