トランプ関税還付を受ける企業が考慮すべき重要事項(2026年5-6月号)

トランプ関税還付を受ける企業が考慮すべき重要事項(2026年5-6月号)

ジェニファー・ポスト(訳:鈴木英夫)[*]

Risk Management web特別版 2026 May-June

米最高裁の「トランプ関税」違法判決

 トランプ大統領が2025年から輸入品への関税導入について言及し始めて以来、その合法性について疑問が呈されてきた。そして最近、米国最高裁判所は、「トランプ大統領が課した関税は国際緊急経済権限法(IEEPA)の下で違法である」との判決を下した。この判決後、輸入業者や企業が既に支払った関税の払い戻しをいつ、どのように受けられるかは、国際貿易裁判所(CIT)の判断に委ねられた。裁判所の判決によっては、米国企業への関税払い戻し総額は最大1,660億ドルに達する模様だ。

 アトマス・フィルトレーション社v.米国政府の訴訟*)において、CITは、税関・国境警備局(CBP)によるすべての輸入関税は払い戻しの対象となるとの判決を下している。これは、CBPが関税・税金・手数料の徴収を完了するまでの314日間の清算期間と、輸入業者が課された関税に異議を申し立てるための180日間の異議申し立て期間の両方を既に経過している場合でも同様である。また、清算が確定した輸入申告の再清算も含まれる。再清算は一種の払戻しであり、関税徴収における誤りを訂正するために、当初の清算内容が修正または取り消される。

*)訳者注:米国における関税関連の訴訟 「Atmus Filtration Inc. v. United States」(合衆国国際貿易裁判所:CIT、事件番号 26-01259) は、大統領権限による関税措置(IEEPA:国際緊急経済権限法に基づく関税)を違法とした連邦最高裁判所の判決を受け、「実際にどのようにして、膨大な還付金を全輸入業者へ効率的に返すか」という具体的な実務の枠組みを決定づけた重要な判例。その後、「Atmus」ケース自体は2026年4月6日に原告の申し立てにより取り下げ(Dismissal)となった。しかし、別の同種訴訟である『Euro-Notions Florida, Inc. v. United States』が新たなリーディングケース(主導訴訟)に指定され、Atmusで出されていた強力な還付命令がほぼそのまま引き継がれている。

 今回の裁判所の判決は、企業が同様の請求を行う際の対応方法についても示唆を与えている。企業が払戻しを確実に受け取るためには、以下の手順を踏む必要がある:

1. 異議申立書の提出
 国際貿易裁判所(CIT)の最近の判決後も、輸入業者または企業が払戻しを受けるために、税関・国境警備局(CBP)に異議申立書を提出する必要があるかどうかは明確ではない。この申立書は、基本的に、貨物が国内に輸入され、流通のために国外に出る前に徴収された関税に企業が異議を申し立てる手段である。

 イートン判事は、国際貿易裁判所(CIT)の当初の判決を修正する最新の命令の中で、「IEEPA関税の還付を受けるための異議申し立ては不要となる可能性が示唆されているものの、CITと税関・国境警備局(CBP)が関税還付に関する法と手続きについてより明確な説明を行うまでは、輸入業者は引続き、清算手続き中の輸入通関状況を監視し、180日間の異議申し立て期間満了前に異議申し立てを行い、還付を受ける権利を保全することを推奨する」と述べている。

 CBPへの異議申し立ては、CITへの申し立てと先に行うことも、同時に行うことも可能である。

2. 国際貿易裁判所へ提訴せよ
 ニューヨーク市にある国際貿易裁判所(CIT)は、関税に関する異議申し立てについて専属管轄権を有している。裁判所は通常、代表訴訟を1件選定して審理・判決を下し、その判決で下された規則を他の類似訴訟すべてに適用する。今回のケースでは、裁判所はアトマス・フィルトレーション社v.米国政府の事件を選定し、最終的に、「トランプ関税を税関・国境警備局(CBP)に支払ったすべての輸入業者および企業は払い戻しを受ける権利がある」と判決を下している。

 CBPに申し立てを行っていない企業が払い戻しを受けられるかどうかは不明確である。同様に、訴訟を提起していない当事者に対してCITが払い戻しを命じることができるかどうかも明らかではない。「CITが訴訟当事者以外の者に対して払い戻しを命じることができる場合、問題となるのは通関手続きの有効性である」と、トンプソン・コバーン法律事務所の国際貿易・運輸規制実務グループの責任者であるロバート・シャピロ氏は述べている。

3. 払い戻しの受け取り
 CIT(国際貿易法)の規定を遵守するため、CBP(米国税関・国境警備局)は払戻し手続きを効率化する新たなプログラムに取り組んでいる。このプログラム「統合管理・処理エントリー(CAPE)」は段階的に導入され、第一段階として申請ポータルが開設された。4月20日現在、プログラムの第一段階は自動化された商取引環境(ACE)ポータルで稼働している。これに続いて、一括処理、審査・精算、払戻しの3段階が順次導入される予定である。

 残りの段階の完了時期やすべての払戻しが完了する時期については明確な期限は設けられていないが、コンプライアンス上の問題がなければ、CAPE申請が受理されてから払戻しまで60~90日程度かかる見込みである。

消費者への返金責任は?

 返金にどれだけ時間がかかっても、輸入企業が返金を受け取った時点で「返金された関税の一部を受け取る権利がある」と考える消費者から訴訟を起こされる可能性がある。消費者はすでにフェデックス、コストコ、任天堂などの企業を相手取って集団訴訟を起こしており、今後返金件数が増えるにつれて訴訟件数も増加すると予想される。

 トランプ政権が関税を導入した際、多くの企業は製品価格の値上げや関税専用の手数料の導入などによって、その負担を消費者に転嫁してきた。現在、消費者擁護団体は、企業が顧客と政府の両方から利益を得る「二重取り」は許されないと主張している。消費者がすでに関税を負担している以上、企業は(関税相当額を消費者から受け取ってさらに)政府からの返金まで受け取り、二重に払い戻しを受けるべきではないという主張である。

 関税還付を申請しようと考えている企業は、対象商品を購入した顧客への対応策を慎重に検討する必要がある。

「小売り業者と(消費者である)顧客は、還付金の一部を回収できる可能性がある」とシャピロ氏は述べている。「こうした『追随請求』に伴うリスクを理解することは、取るべき行動を決定する上で重要だ。関税の還付手続きを怠ると、政府から関税を回収できない一方で、顧客や小売り業者に一部を返金しなければならないという事態に陥ることになるからである。」

 フェデックスは、関税を支払った顧客と荷送人に返金すると述べている。しかし、最近の訴訟によると、コストコは予想される関税払戻金の一部を消費者に返金する約束を一切していない。ただし、どちらの企業の回答も法的拘束力を持たないため、これらの払戻しの最終的な解決は不透明である。

 現在、企業には消費者が支払った関税を払戻す法的義務はないが、状況が変わった場合に備えて、企業は払戻しプログラムの準備を始めるべきである。検討すべき点の1つは、顧客が購入証明を提示する必要があるかどうかだ。ピーコック・タリフ・コンサルティングの国際貿易担当ディレクター、マリア・ペチュリナ氏によると、企業にとって理想的な確認方法は、元の請求書または領収書に明確な項目別追加料金が記載されていることだ。コストコのような小売業者の場合、確認はおそらく会員の購入履歴に頼ることになるだろう。ペチュリナ氏は、関税がすでに一般的な値上げに含まれている場合、確認は著しく困難になると述べている。

「当初関税を支払った企業が最終的に費用を負担した顧客へ、政府の払戻金をそのまま移転するパススルー方式を採用した場合、払戻しは当初の支払い方法をたどって行うことが期待できる」と彼女は説明している。「しかし、一部の企業は『将来価値』、つまり将来取引を行う対象の商品の価格を引下げること(で実質的に還付する方式)を提案しており、これは現在、『不十分である』として裁判で争われている。」

 最近の裁判所の判決で、CBP(米国税関・国境警備局)は輸入業者に対し、支払った関税を払い戻すよう命じられたことに対応し、企業は実際に払戻金を受けるために、対応を検討する必要がある。「全体的に見て、まだ不確実な点が多すぎるため、どちらか一方の解決策を指示することはできない」とシャピロ氏は述べている。「私たちができる最善策としては、裁判所に訴訟を起こし、無効とされた輸入関税に対して(還付の)申立てを行うことである。」

トピック
法的リスク、政治リスク、リスクマネジメント


注意事項:この記事は、”Key Considerations for Businesses Entitled to Trump Tariff Refunds,” Jennifer Post | April 24, 2026, RIMS Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article/2026/04/24/key-considerations-for-businesses-entitled-to-trump-tariff-refunds) をRIMS日本支部が翻訳したものであり、原文と訳文に差異がある場合には原文をを優先します。

ジェニファー・ポストは、リスクマネジメント誌の編集者。
鈴木英夫はRIMS日本支部主席研究員。