【Web特別版】職場復帰コミュニケーション計画を成功させるための9つのヒント(2021年5月号)

職場復帰コミュニケーション計画を成功させるための9つのヒント

リンダ・トーマス・ブルックス[*]


世界保健機関がCOVID-19のパンデミックを正式に宣言してから1年以上が経過し、リモートワークが何百万人もの人々の標準となった。ワクチンが届き、普及が成功し続け、トンネルの終わりに明るい光が見えてくるかもしれないという多くの人々の希望を受けて、多くの企業は現在、可能な再開シナリオとリモートワーク戦略をより綿密に検討している。

一部の企業、特に大規模な組織は100%リモート方針を発表している。フレックスジョブ社によれば、Dドロップボックスはすべての従業員が自宅で働き続けることができると発表した。ツイッターでは従業員は無期限に自宅で働くことができ、フェイスブックでは従業員の半数までが永続的にリモートで働くことができる。

あらゆる規模や業界の組織は職位や責任にかかわらず、実質的にすべての従業員に影響を与えるさまざまな肉体的・感情的な問題を含む意思決定に直面することになる。その結果、包括的なコミュニケーション計画がこのプロセスを導くための不可欠なツールとなる。以下の9つのヒントは、再開の複雑さに備えるために、リーダーシップから現場の労働者に至るまでのすべての人を支援するためのものである。

1. 専門的であると同時に、個人的な配慮にも必ず焦点を当てる。この1年間、人々の労働日の構造と環境は大きく変化し、オフィスへ再び戻るためのコミュニケーション計画は、従業員の福利を最前線と中心に置かなければならない。5,000人以上の従業員を対象とした最近のガートナーの調査では、29%がCOVID-19のパンデミックのためにうつ状態に陥ったと報告している。また、クオリティックス社とSAP社の2700人以上の従業員を対象とした世界的な研究では、67%の人がより高いストレス、57%がより大きな不安、そして53%が感情的に疲労していると回答した。メッセージを作成し、配信する際には、それが単なるロジスティクスに関することではなく、全員の思考や感情の中にあるものにも対処しなければならない。

2. 閉鎖空間で計画は作成できない。戦略とメッセージを策定するためにチームを結集する場合、プロセス全体にコミュニケーション担当役員が関与していることを確保する。状況は絶え間なく変化するので、ニュースや勧告は頻繁に更新され、組織内外の関係者に対して統一されたメッセージを伝えることが重要である。

3. パンデミックでは過剰なコミュニケーションは存在しない。従業員、クライアント、顧客、その他の視聴者がオフィスへの復帰計画について聞くことが多ければ多いほど、彼らはプロセス全体の中に含まれていると感じる。

4. フィードバックを促す。上記のヒントからの帰結として、人々が意見、悩み、提案を表明することを奨励することが重要であり、そのことが、確実に人々が意見を聞くことに役立つ。そのひとつの方法として、社員の心情を把握するための社内調査があり、匿名だと気持ちを表現しやすい人もいる。この結果は、コミュニケーション部門に貴重な情報を提供し、継続的なメッセージ伝達の工夫につながる。

5. 状況が異なれば、考え方も異なりうる。全国各地にわたるときには、従業員の通勤や職場環境との関わり方には大きな違いがある。例えば、都市環境にいる人々は公共交通機関を混雑させることになる一方で、都市以外の人々はより個人的で、より安全に自動車に頼ることができる。ワクチンの利用可能性は、地域によっても集団によっても大きく異なる。いずれにせよ、従業員へのコミュニケーションは「一つのサイズですべて済ます」わけにはいかないし、変わることない計画を作成することはできないことに留意すべきである。状況と優先順位は流動的であり、コミュニケーション計画も流動的でなければならない。

6. 安全第一。人々が復帰するオフィスは、2020年に去った時のオフィスではないし、そうあってはならない。人々は引き続き警戒し、恐れており、コミュニケーション計画には、従業員が身体的に安全な仕事環境にいられるよう注意を払っていることを確認できる重要なメッセージが含まれている必要がある。この情報は、実際の作業空間だけでなく、エレベーターのガイドラインや訪問者への手順など、オフィスビルで取り扱われる関連する手続きも反映している必要がある。

7. ハイブリッドは存在し続ける。最近のPwCのリモートワーク調査では、雇用者がリモートワークへの転換に成功したと83%の組織が考えていて、55%の従業員がパンデミックの心配が軽減されるので、週に3日以上リモートで働くことを望んでいることが明らかになった。「古い常態」に戻るのではなく、この新しい現実を反映する社内外のコミュニケーションが必要となる。

スポーツで譬えてみよう。あなたは個人スポーツそれとも団体スポーツをしているのか。すべての組織は、自宅環境での仕事で達成すべき個人の生産性だけでなく、公式・非公式な協働が重要となるチーム内やチーム間のワークフローも考慮しなければならない。どんな組合せが最も合理的であるかが判明したら、コミュニケーション・チームは従業員に対して、最善のパフォーマンスを発揮できるように決定されたことを知らせるべきである。また、生産性や従業員満足度の測定やコミュニケーションの仕方は、新しい仕事のやり方に合わせる必要があることにも留意する。

8. メディアが何を告げるか。ニュースの中で語られる傾向に細心の注意を払い、正確な情報と誤りや不正確な情報を区別できる方法を確実に知っておくことは、自社では何を、どのように、いつ伝達するかを定式化するのに非常に役立つ。

9. 透明性、透明性、そして透明性。これはコミュニケーションのすべてのプロセスで守らなければならない。仮にメッセージや会話が正直さ、正確さ、思いやりを反映していないとしたら、意味と信頼は失われる。

職場復帰時のコミュニケーション計画の大きな目標は、従業員の安全を確保するために各段階でできることがすべてなされたことで、従業員が安心することである。また、どのように見えたとしても、職場復帰の過程を通して、従業員の視点、ニーズ、関心事を考慮に入れた計画を立てていることを従業員が確認できることも不可欠である。このような困難な時代には、十分に考え抜かれたコミュニケーション計画が、すべての従業員が健全で生産的な未来に向かうための準備を整えるのに役立つ。


注意事項:本翻訳は“9 Tips for a Successful Return-to-Work Communications Plan”, Risk
Management, May, 2021, RIMS Risk Management Site(https://www.rmmagazine.com/articles/article/2021/06/04/9-tips-for-a-successful-return-to-work-communications-plan). をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。

[*]リンダ・トーマス・ブルックスは、米国広報協会(PRSA)最高経営責任者。