【Web特別版】ツイッターにおけるブランドリスクの高まり(2023年1月号)

【Web特別版】ツイッターにおけるブランドリスクの高まり

ジョシュ・ショール[*]


WEB特別版1月号表紙

昨年10月28日にイーロン・マスクがツイッター社を買収して以来、同社は混乱状態に陥っている。新CEOは突然の方針変更に加え、数千人の従業員を解雇したが、その多くはプラットフォーム上での不正使用や誤報と戦う責任を負う投稿監視チームに所属していた。その結果、多くの企業がツイッター社におけるブランドの安全性と評判の将来について疑問を抱いている。

ソーシャルメディア・プラットフォームは、その善意にもかかわらず、自社のブランドや顧客について企業自らが気にかけているほど関心が高くないことを、企業が認識することが不可欠である。メタは最近、ブランドのなりすましを報告しやすくする方法を明らかにしたが、それは、あなたが望むのと同じ程度に彼らが偽装を探していることを意味するものではない。要するに、企業はオンラインでブランドを保護するために、メタやツイッターまたは、他のソーシャルメディア・プラットフォームに頼ることはできないのである。

ブランドの安全性リスク

ブランドの安全性とブランドのなりすましは、企業がソーシャルメディアとその評判に関連する、企業にとってより差し迫った懸念事項の2つである。ブランドの安全性とは結局のところ、ブランドが不快な環境や、不適切なコンテンツや論争の的になるコンテンツの近くに現れたりするのを防ぐことに集約される。

マスクがツイッター社を買収すると、大手広告代理店アイピージー・メディアブランズは顧客に対して、プラットフォームが信頼と安全計画を明確にし、それをどのように実行するかを明確にするまで広告を停止するよう指示した。ブランドの安全性に関して言えば、広告が不適切なコンテンツに近い状態で表示されないようにすることは比較的簡単である。11月にツイッターの上位広告主の半数が行ったように、プラットフォーム上での広告の掲載を停止するだけである。

しかし、ソーシャルメディア上での自社ブランドのなりすましに関しては、見て見ぬふりをするわけにはいかない。なぜなら、たとえあなたが何も悪いことをしていなくても、63%の人がばかげた行為に対して組織の責任を問うからである。ソーシャルメディア・プラットフォームが、あなたと同じ厳しさを適用することを信用するといった危険を冒すことはできないので、あなたのブランドが悪用されていないかプラットフォームを継続的に監視する必要がある。

ツイッターでのブランド検証

長年にわたり、ツイッターの青いチェックマークは、それを使用するアカウントは追加の検証を受けているため、信頼を伝えてきた。残念ながら、8ドルのツイッターブルーの購読料改定後は、誰でも自分のアカウントにその一時的な信頼マークを付けることができるようになった。その結果、世界有数のブランドとそのフォロワーが、なりすましの被害に遭った。

例えば、イーライ・リリーの偽アカウントが、製薬会社がインスリンの代金を今後請求しないと発表した。翌日、この製薬会社の株価は下落し、数十億ドルにおよぶ株式の時価総額が消えた。また別のケースでは、あるユーザーがツイッター社になりすまし(ブルーチェックと全て)、すぐに暗号通貨ウォレットの認証情報を盗むことを目的とした詐欺を始めたケースもあった。

その後、ツイッター社はツイッターブルーとツイッターブルー・フォー・ビジネスに関する検証方針の一部を明確にした。12月11日時点で、ツイッター社はなりすましを防止するための審査ステップを追加して、ツイッターブルーを再開した。この見直しは、青いチェックマークをアカウントに付与する前に電話番号の認証を要求している。さらに、90日以上経過したツイッターアカウントのみがブルーチェックマークの対象となり、プロフィール画像、表示名、Twitter @ハンドルネームを変更すると、ツイッター社がアカウントを再認証するまでブルーチェックマークが削除される。

電話番号要件は、正しい方向への第一歩に見えるかもしれない。しかし、「バイパス・ツイッター電話検証2022」を検索すると、グーグルは何百万件もの検索結果を表示する。これらの方針が、実際に決められたなりすましを阻止できるかどうかは、まだわからない。

また、ツイッター社は現在、ツイッターブルー・フォー・ビジネスのテストを行っており、企業や潜在的にはその従業員をゴールドチェックマークの対象にしようとしている。この運用は、以前からツイッター社と関係のあった企業から始まった。現在、多くの大企業のアカウントにゴールドチェックマーク(例:アマゾン、マイクロソフト、ソニーなど)が付けられていているが、他の会社のゴールドチェックマーク認証要件はまだ明らかにはされていない。

自社のブランドを保護する

ツイッターは成功の見込みのないことを試みているわけではないかもしれないが、いくつかの報告では、プラットフォーム上で人種差別、同性愛嫌悪、反ユダヤ主義のヘイトスピーチが増加していることが報告されている。貴社の広告表示が不適切なコンテンツに近づくのを防ぐため、しばらくの間、ツイッター広告を一時停止させるのが賢明かもしれない。

また、貴社あるいは貴社のマーケティング部門が、マストドン、ポストニュース、ハイブや、いずれツイッターの代替となりうる他の新しいソーシャルメディア・プラットフォームの調査を始めることも意味がある。少なくともそこに、貴社のブランドネームアカウントを請求すべきである。

さらに、企業は自社ブランドのなりすましを発見し、それを削除することで自らを保護する必要もある。詐欺師はユーザーアカウントの認証情報を盗んだり、銀行口座の情報を収集したり、決して届くことのない商品の代金を受け取ったり、ユーザーを騙して暗号通貨詐欺を行ったりしようとするかもしれない。攻撃者は貴社ブランドがツイッターで活動しているかどうかにかかわらず、一般ユーザーとの間に築いた信頼関係を悪用する機会を狙っている。貴社ブランドが悪用されないよう、ツイッターを継続的に監視する必要がある。

詐欺やなりすましのためにソーシャルメディアを手動で監視することは、困難な作業となりうる。ツイッターで機能しているプロファイルは4億5000万存在し、毎日投稿されるツイートは5億件にのぼると推定されている。ブランド保護やデジタルリスク保護のサービスプロバイダと共働している企業がある。これらの企業は、インターネット、ソーシャルメディア・プラットフォーム、モバイルアプリ市場を介して、ブランドの不正使用がないかどうかを調べるという地道な作業を自動化することができる。

結局のところ、企業はツイッター、メタ、その他のソーシャルメディア・プラットフォームがこの問題を解決するのをただ待っているわけにはいかない。リスクに対処するために積極的な措置を講ずることで、貴社ブランドが保護され、評判が確実に保たれるのである。

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注意事項:本翻訳は“ The Rise of Brand Risk on Twitter”, Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article/2023/01/30/the-rise-of-brand-risk-on-twitter ) January 2023,をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
ジョシュ・ショールはアルーアセキュリティ社CEO、Practical Oracle Securityの著者。