【Web特別版】効果的な倫理・コンプライアンス・プログラムを構築する方法 (2023年9-10月号)

【Web特別版】効果的な倫理・コンプライアンス・プログラムを構築する方法 (2023年9-10月号)

タイ・フランシス[*]


Web特別版9月-10月号

いかなる事業活動においても、価値観に基づく行動や倫理的な行動を優先することは必要不可欠である。倫理とコンプライアンスの強力な基盤がなければ、組織は評判の低下、法的・財政的な影響、さらには失敗に直面する可能性がある。

基本的なコンプライアンス・プログラムを採用することで、組織は法規制の状況を見極めることができるし、また多額の罰金や金銭的な落とし穴を避けることも、さらには企業とその事業活動に関わる人々が共通の価値観に基づいて行動することで繁栄することもでき、倫理的な職場風土を築くことができる。LRNの調査によると、最も倫理的な文化を持つ企業は、従業員のロイヤリティ、顧客満足度、適応性、イノベーション、成長などの主要な経営指標において、他の企業の業績を40%上回っている。

これらは、企業が経済的逆風、貿易制裁、サプライチェーンの混乱、人員不足などに直面する現在、重要な検討事項である。さらに、貴社の倫理・コンプライアンス・プログラムの有効性は、貴社が訴訟に直面した場合、米国司法省が検討することになる。米国の量刑委員会は、そのガイドラインの影響を明確に示しているため、倫理とコンプライアンスの効果的なプログラムを構築することが重要である。

文化を測定することは、コンプライアンス・プログラムの重要性の一側面である。倫理文化とは、倫理的意思決定に影響を与える個人や組織の価値観、態度、行動を指す。倫理的文化を測定することは、重要な指標を確認することであり、貴社の組織的価値観を理解し、改善すべき点を明確にするのに役立つ。

効果的で測定可能なプログラムを構築するためのプロセスは、組織の成長、軌跡、業界、場所によって異なるが、以下の要素に対処する必要がある。

トップの姿勢。期待を設定して最善の行動をモデル化することは、リーダーシップ・チームの責任である。もし組織内のすべての人を平等な尊敬で公正に扱い、誠実に行動し、価値基準に基づく意思決定アプローチを取っていなければ、他の人にそれを期待することはできない。
行動規範文書を作成するか、誰も覚えていない古い文書を更新する。行動規範は、期待を反映したものでなければならない。これはミッション、ビジョン、価値観の表明であり、組織内の人々が自らどのような行動を期待されているかを明らかにするものである。行動規範は、従業員が正しいことをするのを支援する上で、視覚的に関与し、読みやすく、有用なガイドとすべきである。差別禁止、ハラスメント、データプライバシーに関する方針に特に注意を払う必要がある。検索可能で、Webベース、およびモバイル対応する場合、従業員は定期的にそれを確認することが可能である。例えば、利益相反のパラメータを確認したり、従業員支援ホットライン番号を見つけたりすることができるように。
誠実な人材に囲まれることによって、有害な職場風土の芽を摘み取る。新入社員を採用する際には、ミッションに合致し、最善の行動の模範となるような鋭い思考を持つ人を選ばなければならない。面接では、その人の価値観を明らかにするために質問することで、前向きで包括的な職場環境を作り出すことができるし、強い倫理観を持った人々を優先することができる。組織の採用プロセスのすべてのポイントを厳しく見て、現在使っているプロセスや言語が、会社の姿を反映しているかどうかを自問してみる。最も急成長している労働者集団であるZ世代は、目に見える価値観が自分のものと一致しない企業では働かないことに留意する必要がある。良い例を見つけるのに、遠くに目を向ける必要はない。例えば、アウトドアウェア用品メーカーのパタゴニア社の創立者であるイボン・チュイナードは、長い間、環境保護と持続可能性を提唱してきた。企業理念である「最高の製品をつくり、不必要な危害を与えず、環境危機の解決に向けて事業を駆り立て、実践する」は、明確で、志を同じにする人々を惹きつける。
リスクを評価し、倫理的文化を早期に、かつ定期的・高頻度で測定する。人事、法務、コンプライアンス、リスク、情報セキュリティといったそれぞれのチームをチーム・トレーニングやサーベイ活動に同期させることで、バラバラの企業活動がチームに影響するのを防ぐことができる。心情調査を正しいコース・モジュールに組み込み、コンプライアンス・トレーニングの負担を軽減し、感情と感性を測定し、問題領域を特定し、経時的な変化を測定し、業界の同業他社に対してベンチマークできるようにする。優れた倫理とコンプライアンス管理プラットフォームは、データの意味を見つけるのに役立つ。
報告する力を鍛える。企業は、投資家、従業員、顧客、取引先、地球などのステークホルダーに対して責任を負っている。政府の規制当局は、自社がコンプライアンスを遵守しており、組織のあらゆるレベルでコンプライアンスの文化を効果的に醸成していることを示すためのより多くの証拠を求めている。これらは優れたガバナンスの証左である。環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する指標は、現在、繁栄する事業の指標として財務諸表と並んで位置づけられる。
倫理的文化を測定することは困難であるかもしれない。しかしながら、倫理とコンプライアンスの効果的なプログラムは、事業を保護し、持続可能な成長を促進するために必要なツールと資源を提供する上で、非常に貴重なものとなっている。基盤となるコンプライアンス・プログラムを採用し、倫理的文化を測定することで、強固な職場風土を構築し、評判を損なうことを避け、常に倫理的で責任ある行動をとることができる。

トピックス
危機管理、全社的リスクマネジメント、名声リスク、リスクマネジメント、戦略的リスクマネジメント


注意事項:本翻訳は“How to Build an Effective Ethics and Compliance Program ”, Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article/2023/09/27/how-to-build-an-effective-ethics-and-compliance-program ) September 2023,をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。

[*]タイ・フランシスMBEは、LRN社の最高顧問。