【Web特別版】一酸化炭素中毒リスクから施設を守る(2024年3-4月号)

【Web特別版】一酸化炭素中毒リスクから施設を守る

エリック・スペイセク[*]


2024年3月-4月web特別版

疾病管理センターによると、米国では毎年10万人以上が一酸化炭素中毒で救急病院を訪れ、400人以上が助からないという。一酸化炭素(CO)は無色無臭のガスで、有毒である。低濃度でのCOは、健康な人に倦怠感を、心臓病の人に胸の痛みをもたらす。濃度が高くなると、吐き気、錯乱、めまい、頭痛、視力障害を引き起こし、死に至ることさえある。換気されていない灯油やガスのスペース・ヒーター、水漏れしている煙突、自動車の排気ガス、動作不良の炉や機器などは、すべて一酸化炭素の発生源となり得る。

COは検知するのが難しいため、建物に漏れがあっても、中の組織はまったく気づかないかもしれない。したがって、以下のようなCO問題の兆候を知ることが重要である。

以下の手順は、組織が一酸化炭素漏れのリスクを防ぎ、施設内の全員をCO中毒から守るのに役立つ。

  1. 専門家を連れてくる。すべての炉、ガスストーブ、暖炉を年に一度、資格のある専門家に点検してもらい、適切に換気されていることを確認する。専門家は、煙道管に錆び穴、配管の接続不良、煤の蓄積や鳥の巣などの詰まりがないかチェックする必要がある。
  2. 建物全体に一酸化炭素警報器を設置する。建物の暖房、温水、調理のために燃料を燃焼する場合、または施設に囲まれた駐車場がある場合、建築基準法により一酸化炭素警報器の設置が義務付けられている。CO警報器は、空気中の致死レベルのCOを、建物内の全員に警告することで命を救うことができる。警報器を定期的にテストし、5~7年ごとに交換する。
  3. ストーブを稼働させるときは、厨房換気扇を使用する。ストーブは多数のCO中毒症例を引き起こす。暖めてもあまり熱が出ないように思えても、換気扇を回したり、近くの窓を開けて風通しを良くすることが大切である。
  4. 車両を長時間アイドリングさせない。建物の空気取り入れシステムの近くで、車両によるアイドリングを禁止することが特に重要である。車両が建物内のシステムにCOを流入させ、建物内の人命を危険にさらす可能性があるためである。
  5. 発電機は屋外でのみ運転する。停電に備えるため、または停電の場合には、発電機を施設から10~15フィート離れた場所に設置する。
  6. 電源を切り替える。ガソリンを動力源とする機器から、電気、バッテリー、または圧縮空気を動力源とする機器への切り替えを検討する。さらに、COが空間に充満し、ユーザーを危険にさらす可能性があるため、屋内または狭い空間ではガス動力工具を決して使用しないことである。
  7. 暖炉の煙道を掃除する。煙道が詰まると建物内に一酸化炭素が閉じ込められる可能性があるため、使用前に毎回煙道を掃除する習慣を確立することが重要である。

CO中毒事件が発生した場合、上記のような予防策は、組織に過失がないことを証明するのにも役立つ。さらに、包括的な一般賠償責任保険、包括的賠償責任保険、および超過賠償責任保険など、いくつかの形式の保険が組織を財務的に保護するのに役立つ。ただし、すべての保険が同じというわけではない。適切な保護を確実にするために、リスク専門家は組織の特定のニーズについて組織の保険代理店やブローカーと話し合うべきである。与えられた保険が何を補償するのか、限度額はいくらか、除外されるものがあるとすれば何かについて、必ず話し合っておく。必要であれば、組織は他の保険でギャップを埋めることができる。

一酸化炭素中毒からの保護は、すべての組織が定期的に実施する業務のリストの一部とすべきである。ビルの管理者であれ、指名されたスタッフであれ、誰かが組織がこの致命的な危険にどのように対応しているかを把握しておくべきである。

トピックス
全社的リスクマネジメント、環境リスク、ESG規制、リスクマネジメント、戦略的リスクマネジメント


本翻訳は“Protecting Facilities Against Carbon Monoxide Poisoning Risk ”, Risk Management Site (https://www.rmmagazine.com/articles/article/2024/03/05/protecting-facilities-against-carbon-monoxide-poisoning-risk ) March 2024,をRIMS日本支部が翻訳したものです。原文と和訳に相違があるときには、原文を優先します。本文中は敬称略です。
エリック・スペイセクはチャーチ・ミューチュアル・インシュアランス・カンパニー(S.I.)リスクマネジメント担当副社長。